英語で読もう世界のニュースシリーズでは、世界のニュースを翻訳機を使わずに読めるように、記事の概要と難しい英語の表現を紹介しています。
今回はサル痘(monkeypox) 特集です。
サル痘は天然痘ウィルス(poxvirus)の一種で、有名なものとして天然痘(smallpox)や牛痘(cow pox)などが挙げられます。
エジプトのミイラからも痘跡(smallpox scars)[1]天然痘が治った跡が発見されており、人間を数千年以上苦しめてきたウイルスであることがわかります。
そんな天然痘と牛痘ですが、実はワクチン(vaccine)の発明の歴史と深く結びついています。
イギリスの研究者Edward Jennerが「比較的症状の軽い牛痘に感染した人は重度の天然痘への免疫(immunity, immune system)を持っている」ことを発見したことがきっかけになったのです。
そして、20世紀までは牛痘が自然のワクチンとして働き、20世紀にはWHO(World Health Organization)のワクチン接種の推奨もあり、1980年には人類は天然痘を完璧に根絶(eradicate)することに成功したのです!
今回のサル痘に関しても天然痘のワクチンが症状(symptom)の緩和に役立つことを専門家が指摘していました。
なので「第二のコロナが来た」と恐れずに、まずは人類がどれほどこの病気(disease)についてわかっているのかを知りましょう!
サル痘は憂うべきか、無視すべきか – BBC News
概要
- サル痘はDNA ウィルスであり、RNAウィルスのコロナ(covid)やインフルエンザ(flu)とは違って変異(mutation)のスピードは遅い。
- サル痘ウィルスは親密な関係性を持った人たちの間で感染することや、症状の確認がしやすいことなどから感染防止のためのロックダウンは現在の段階では差し迫っていない。
- 天然痘の症状と似ているが、天然痘に比べて症状の重度は低く感染力は低い。
- サル痘は本来サルよりも齧歯類(rodents)を宿主としており、それらの外では基本的に小規模でしか繁栄できない。
- しかし、病に詳しい科学者たちはサル痘が珍しく多くの国で突然発生(outbreak)したことに驚いており、いつかサル痘ウィルスの振る舞いが変わってしまうことを危惧している。
- そのほかにもサル痘を初めて確認できた人と西アフリカや南アフリカとのつながりは見つからなかったり、性器周りに病変(lesion)[2]病気の過程であらわれる生体の局所変化のことができた人の性行為によって広がっていることなどの不審な点が見受けられる
症状
- 発熱(fever)、頭痛(headache)、リンパ節の脹れ(lymph node swelling)、筋肉痛(aching muscles)
- 主に顔や手、足への痒みを伴う発疹(rash)、病変
感染方法
- 感染した人や動物と濃厚接触(close contact)
- 病変が出た人が使っていたベッドや服に触れる
対策
- 天然痘のワクチンや抗ウィルス薬(antiviral drugs)
英語
get to grip with ~: 理解したり対処するように努める
If you’re still reeling from the Covid pandemic, well sorry but there’s another virus to get to grips with.
コロナによるパンデミックから立ち直れていない方には残念ですが、他にも対策しなければならない/知らなければならないウィルスがあります。
get to grip with の代わりにcome to grip with も同じ意味で使われます。
他の例文として、”I cant’t seem to get to grip with this problem.” (私にはなかなかこの問題を解決するのは無理なようだ)などのようにも使えます。
days away from ~: を目前に控える
Let’s be clear: this is not another Covid and we’re not days away from lockdowns to contain the spread of monkeypox.
はっきりさせておこう。このウィルスは新たなコロナウィルスでもなければ、感染防止のためのロックダウンが目の前に迫っているわけでもない。
daysは直訳すると数日という意味であり、その前に具体的な数字を入れることも可能です。
例: “We’re only ten days away from the deadline.” (締め切りまであとたった10日だぞ!)
crop up: (予想していない形で)現れる
Small numbers of cases have cropped up elsewhere in the world before, including the UK, but all can be immediately linked to somebody traveling to an affected country and bringing it home.
小規模での感染者は、イギリスを含めた世界のどこにでも現れていたが、それら全ては感染した国への旅行した人や旅行から帰ってきた人と関連付けることができました。
感染者数が急増、サル痘への疑問の声が高まる – Science
概要
感染理由の推察
- 科学者たちは、感染者数に対してMSM(Men who have Sex with Men: 男と性行為した男)が占める割合が多いことを懸念している。
- 本来、サル痘は濃厚接触や呼吸器飛沫(respiratory droplets)にて広がるが、今回は性行為(sexual activities)が絡んでいる可能性が高い。
- 性行為によりサル痘が感染する仕組みの最もそれらしい仮説として、”殆どの感染者には性器周り(perigenital)と肛門周り(perianal)だけに病変ができているため、その病変との接触により感染したのではないか”と考えられている。
- MSMやトランスジェンダーの人はHIVに感染している確率が高いが、HIVによる免疫低下が今回の突然発生の原因である証拠は今のところない。
サル痘の現在と歴史
- スペイン、ポルトガル、アメリカ、カナダ、スウェーデン、イタリア、ベルギー、フランス、ドイツ、オランダ(Netherlands)、オーストラリア、イスラエルにて感染が疑わしい人が100人以上いる。
- サル痘が人間に発症したのが発見されたのは1970年で、それ以来サハラ砂漠以南のアフリカ地域(Sub-Saharan Africa)にて、サル痘に感染した動物や人間と接触した観光者によって他の国に持ち運ばれていた。
- コンゴ盆地株(Congo Basin strain)の致死率は10%程だが、今回の西アフリカ株(West Africa strain)の致死率は1%ほど
- 感染者は各国にまたがっていて、(本来なら少ないウィルスの突然発生にしては)感染者数は全体的には多いが、現在では人口のごく限られた集団にのみ感染している。
- WHOは副作用の強さから1977年にワクチンの推奨キャンペーンをやめ、最後の患者は1978年に亡くなったことで、人類は天然痘を根絶した。
- 天然痘への感染やワクチン接種はサル痘にも効果があるが、この50年にわたってサル痘に弱い人が増えてきている。
サル痘へのこれからの対策
- 濃厚接触者や感染が確認された人でも、サル痘のウイルスにさらされてから4日以内にワクチンを受けることで病気を予防できる。
- しかし、ワクチンは基本的に国の備蓄としてしか残されておらず、数も十分でないため、今の段階では医療従事者や感染者、濃厚接種者にワクチン接種を予定していると発表した国はない。
- サル痘の治療薬(tecovirimatやbrincidofovir)はアメリカのFDA(U.S. Food and Drug Administration: アメリカ食品医薬品局)によって認可されてはいるが、やはり現段階で広く普及させるには難しい。
英語
make up a disproportionate number of …: 不釣り合いなほどの割合を占める
But scientists worry about the spread among men who have sex with men (MSM), who make up a disproportionate number of the cases so far.
しかし、科学者達は男同士で性行為を行った男性達の感染が、これまで確認された症例の中で不釣り合いなほどの割合を占めていることを気にかけています。
make up は”占める、構成する”という意味で、”American workers make up 100% in SpaceX.“(SpaceXではアメリカ人の労働者が100%を占める)のように使います。
disproportionate も難しそうな見た目ですが、よく見ればproportion(割合)→proportionate(釣り合いの取れた)→disproportionate(不釣り合いな)というふうに連想できます。
*proportionate は、数学では「比例している」という意味で使われるので頭の片隅にでも入れておきましょう。
misnomer: 誤称
“Monkeypox” is a misnomer; the virus was discovered in 1958 in a colony of research monkeys, but its natural hosts are most likely rodents and other small mammals.
サル痘というのは正確な名付けではない。1958年にウィルスが確認されたのは猿の研究所だったが、自然宿主は齧歯類や小さな哺乳類であることが多いのだ。
今回のサル痘についての話題が出たらいつかは言いたい雑学ですね。
せっかくなので「サル痘っていうのはmisnomer… 違った、誤称なんだよね」って言ってみましょう。
おそらく飲み会に誘われる数は減り、感染の可能性を低下できます。
余談ですが、公式な名前や役職名のことをdesignationと言います。
なのでmisnomer の英語での定義を見ると、”a wrong or inaccurate name or designation.”と書かれています。
これもせっかくなので、「〇〇さん、僕の名刺のdesignationを部長に変えて名刺作り直してちょうだい」と言ってみましょう。
おそらくセクハラする相手があなたの周りからいなくなり、感染の可能性が…(以下略
文の途中のfor example
“Only a small subset of the population are currently affected and while I would not be surprised if there are more cases, we don’t expect it to be taking off the way COVID-19, for example, took off,”
現在感染している(影響を受けている)人たちは人口のごく一部で、これからもっと症例が増えても驚きはしないが、例えばコロナが広がったようにこれから広がるとは考えてはいない。
学校で習った文法に慣れていると、文の途中に入ったfor example がややこしく感じることがありますよね。
しかし、落ち着いて見てみると”the way COVID-19 took off” (コロナが広がったように)の主語と述語の間にfor example が入ったことにより「”例えば”コロナが広がったように」と簡単に理解できるはずです。
また、take off は飛行機などが離陸する時に使える表現ですが、ここでは「コロナが全世界に向けて飛び出した」=「感染が広がった」という解釈をしています。
サル痘が全世界へ: なぜ科学者たちは警戒しているのか – nature
概要
サル痘が初めて確認されたのは1958年で、名前の由来は研究所のサルから発見されたことにある。
今までは、アフリカ(主に西アフリカや中央アフリカ)では一年あたり平均して数千件のサル痘感染者が確認されたが、アフリカの外ではとても少かった。
科学者が警戒していること
- この1週間でアフリカの外で確認されたサル痘患者は、1970年からアフリカの外で確認されたサル痘患者よりも多いこと。
- ポルトガルの研究者がアップロードした遺伝子情報の草稿によると、西アフリカ株と関係していることがわかったが、今回のサル痘ウィルスがどのように違うかや、なぜ多くの国で発症したのかはまだわかっていないこと。
- 現段階では感染者同士の関係性に結びつきが見つけられないため、サル痘が静かに広がっているのではないか。
- 本来サル痘では肌に病変ができるのだが、もしサル痘がコロナのように無症状で広がる(spread asymptomatically)ようになると追跡が困難になること
- なぜ感染者の多くが性行為をしたゲイやバイセクシャルなどの男たち(GBMSM: Gay, Bisexual Men who have Sex with Men)なのか。
- Raina MacIntyre 氏の仮説では「たまたまGBMSMのコミュニティの1人が感染して、そのコミュニティ内だけで循環しているのではないか」とのこと
科学者達がパニックにならない理由
- コロナと比べて変異のスピードが遅いため、既に天然痘用のワクチンや薬があるため。
- コロナが空気飛沫(aerosol)で感染したのに対し、サル痘は咳をした際の唾(saliva)などの体液(body fluid)による感染することから、感染者数はコロナに比べてとても少ないことが見込まれるため。
- アメリカではバイオテロの可能性にも注意しながら、天然痘のワクチンの準備を進めている。
- 濃厚接触者にワクチンを打つ”ring vaccination“により感染のルートを断ち切り、感染拡大を抑えることができそうであるため。
英語
seldom do: 滅多にしない
More than 120 confirmed or suspected cases of monkeypox, a rare viral disease seldom detected outside of Africa, have been reported in at least 11 non-African countries in the past week.
アフリカの外では滅多に見つからない希少なウィルス性疾患のサル痘が、ここ1週間で少なくとも11のアフリカ以外の国で120人以上の確定した/疑わしいサル痘の感染者が報告された。
seldom は「滅多にしない」という意味で、主語と動詞の中に置かれることが多いです。
例: “I seldom eat meat.” (私は滅多に肉を食べません。)
a handful: 一握りの
But cases outside Africa have been limited to a handful that are associated with travel to Africa or with the importation of infected animals.
しかし、アフリカの外の症例はアフリカへの旅行や感染した動物の輸入に関係した一握りの人に限られています。
誤って「手のひらいっぱいに」と訳す人もいますが、正しくは「一握りの」です。
また、wonderful やbeautiful を違って、handful の前には必ずaがつくことにも注意しましょう。
curb: 抑制する
It doesn’t transmit from person to person as readily, and because it is related to the smallpox virus, there are already treatments and vaccines on hand for curbing its spread.
人から人へと次々に感染するわけでもないことに加え、天然痘ウィルスと関係があることから、既に感染拡大を抑えるための治療薬やワクチンがある。
カーブというと「曲がる」「曲がり道」しか連想できませんが、「抑制する」という意味があります。
restrain との違いは基本的にありません。
他にも、「躊躇なく、容易く」を表すreadily や、「特定の目的のためにある、対応する必要がある」という意味のon hand など、よく出てくるけれど忘れやすい表現もありました。
その他、参考リンク(WHO, CDC)
より詳しいウィルスの特性や予防法などを知りたい方はWHOやCDC(Centers for Disease Control and Prevention)のサイトをご覧ください。
これからも沢山の記事が新たに発行されると思いますが、今回紹介した英単語がなんとなく頭に入っていれば読めることでしょう。
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